人生最良の教師。

ソフィア・ローレンの夫で映画プロデューサーのカルロ・ポンティ氏が、享年94歳、スイス・ジュネーブの病院で亡くなったと今朝報じられた。
感慨深いものがあった。俺の思春期、将来の確たる展望も描けず(今考えれば当たり前)、教室にも、教師にもなじめず、何の疑いもなく受験勉強に精を出すクラスメートにもうんざりしていた。
東西冷戦構造の中で、チェ・ゲバラカストロキューバ革命があり、フルシュチョフとケネディキューバ危機があり、そのケネディが暗殺され、シナイ半島では戦火が起こり、ベトナムでは僧侶がガソリンを被り抗議の焼身自殺をするなど、悲惨は世界のあちこちで起こっていた。

小学生の頃からマセたガキで6年生の俺は松竹『太陽の・・・シリーズ』で炎加代子のベットシーンで頭に血が上り、深沢七郎の『笛吹川』に涙し、大島渚らのヌーベルバーグ系の理解に悩んだりしていた。
ヨーロッパ系の映画にも夢中で大概授業をサボり、映画館の暗闇に潜り込んでいた。
夕方、キャプテンを務める陸上競技部の部活の時間には部室に現れるという、自己中心のカリキュラムで学校生活を送っていた。

掃除当番などいつもサボっている俺にクラスメートの女性達から糾弾されていたが『高校は義務教育じゃねぇんだ、単位をとればいいんだろう』と開き直り、顰蹙を買う日々。

でもこれら映画鑑賞の日々から人間という生き物の深層意識と状況変化での心理の表裏、男と女の愛と打算とどちらも正義の自己主張と裏切りと言い訳。

これらの映画はニキビ面のガキには人生の不可思議を考える最良の教師であった。
カルロ・ポンティプロデュースの映画『道』『ドクトル・ジバゴ』『ひまわり』に素直に涙した日々が財産でもある。