白い峪の水の輝き。
ある隔月刊誌から、釣りについての原稿の依頼が来た。400字、6枚。
そこの編集長、俺が17,8年前にフライフィッシングに夢中になっていたのを記憶していたらしい。
さらに大学時代の友人が編集長をしていたアウトドアの雑誌に1年間、随筆を書いていたのも覚えていたとか、編集者が言う。
ある考えがあって、今はロッドは3階の屋根裏部屋のフライタイングデスクの側に、すっかり埃を被っている。
しかしこのごろ、梅雨の空も明けて夏草が生い茂り、セミの鳴き声を耳にすると、
大朝日山系のあの、白い峪のエメラルドグリーンの美しい水の流れを、思い出していた。
高校生の頃、一人でテントを担いでその峪を訪れ、深い秋の紅葉の林の中にテントを張り、ルアーロッドで岩魚を釣り上げ、コーヒーを沸かし、木漏れ日の中で文庫本(ニック・アダムス物語)を読みながら、二泊過ごした時間が、忘れられない。
女性の名前の上品で、しかもタフなドライフライをネタに、思い出の峪のことでも書いてみようか。