かつて20年ほど務めた会社時代の部下の女性に会った。

体調を崩して点滴を受けるなどして通っていた病院へ今日も。
おれ自身の診断は大分よくなっている、あとは消耗した体力回復のため無理しないこと。
飲酒は、あと10日は駄目とのお達し。

支払い窓口の待合コーナーで「あら〜!」と声を掛けてきた女性、25年前に入社した元部下。
40代も後半か、「おこちゃまは?」と聞いたら「いないんです、今日は主人の父の付き添いで、91歳になるんです」と言う。
彼女は大学を出て入社、美人聡明、控えめ、しっとり系で男性社員注目の新人だった。
三人姉妹の長女、入社4年目に実父が自死、妹が決まっていた縁談が壊れたりと色んな相談に与ったことがあった。

男の噂を全くと言っていいほど聞かなかった。
前の会社も辞めたと聞いた10年前、俺が起業した今の会社を手伝うか?と誘った。

暫く考えさせてくださいと言ってきた。
半月後会いたいというので、外で会った。

結婚すると言う、相手は俺も勤めていた彼女の前の職場の先輩。
俺と同じ年、11歳上の妻子もちの駄目んず。

男は正式に離婚が決まり入籍できる、実父が自殺した私にはありがたい申し出です、と言う。
夫になる男は家にいてくれと言う、俺の下で働きたいけれど、彼がウンと言いません。
男は一時期俺の部下だったが、余りの出鱈目な仕事ぶりに他所に出したことがあった。
男は3度目の結婚、彼女は初婚、よりによって、と思ったが決めたんですと言う彼女に、そのときはおめでとう!と言って分かれた。

そして今日10年ぶりに偶然会った。
88歳の義母は特別老人ホーム、91歳の義父をこうして週に3日病院に連れてくると言う。
かつての知的なしっとり系の美人は、すっかりやつれており可愛そうになった。
「よかったのか?」と聞いたら「ハイ!」と言う声が沈んでいたように感じたのは、考えすぎか。